「アセンション2012」
実に1年半ぶりの舞台だった。
ということは、子供にはもっと久しぶりだったんじゃないだろうか。
トレランスの公演だから、比較的あまり遅い時間までは稽古したりはしなかったので、人に預ける時間も短くて済んだけれど、それにしても、お留守番ができる時間が1時間もあるというのは、親にとっては嬉しい。
そうだ、何より、今までと比べて、子供の方が我が家の仕事態勢に耐えられるようになったのが大きい。
親がいない「時間」のことだけではない。精神的にも耐えていた。 と言うより、親子三人で態勢を作った、と言ってもいいかもしれない。
今回はまた両親でやっていることだから、家の中でもずっと芝居の話が飛び交っていて、はじめのうちは「あたしの話も聞いて!」と文句を言っていたが、そのうち口を挟まなくなった。
自分の預けられ先が「ここじゃなきゃ嫌だ!」と言うことがなくなったし、シッターさんが来てくれる30分前に帰ることがあると、洗濯物を取り込んで、たたんでしまってくれることもあった(初めての日だけだったけど。家の中につってあるハンガーに自分のパンツが下がっていたのが恥ずかしかったらしい)。
お稽古事に一人で行って帰れるようになったのも大きい。
だから、私のすることは、朝、子供が鍵を持って出かけるのを確認すること、学童からは何時に帰るのかを確認すること、今日は誰が家へ来てくれるのか、或いは誰の家で待っているのかをきちんと伝え、宿題と明日のしたくを必ずやることを約束させて、学校へ送り出すこと、それから家の中をきれいにして、夕食を作り置きしておくことだけ。
シッターさんも、6時半になったら作ってある夕食を温めて出して一緒に食べ、8時にお風呂に入れさせ、9時半過ぎにベッドに送ることだけ。お風呂も予約で沸いているし、洗うのも髪の毛を乾かすのも全部、自分でできるようになったから、手伝うこともないらしい。
宿題をやっている間も暇だから、シッターさんは本を読んでいるらしい。
まさに、いてくれるだけでよかったのだ。
しかも、寝付いた後、シッターさんの帰る終電の時刻が近づいてきたら、私も電車の中から連絡して、鍵をしめて出てきてもらうこともできた。つまり、寝ている子供を20分くらいの間、置いてくるのだ。
その間に目が覚めたら、さすがにびっくりするだろうけど、うちの子は8年間の間、夜中に目覚めたことが2度くらいしかない。しかも寝入って1~2時間はまず大丈夫。
地震や火事がないことだけを祈りつつ、駅でシッターさんに会ってさよならしてから、自宅へ戻る。
さらに、あの難しい公演を2回も観れた。ほかにも、私のレッスンで教えていた小学2~6年生の子供たちが殆ど全員来てくれて、みんなおとなしく観ていたそうだから、うちの子だけが誉められるわけではないが、今までの素行からしたら進歩だ。わけの分からないストーリーだと、すぐに足をブラブラさせたり、飴やガムを食べたがったりして、横に座っていて気が気じゃなかった。
今回は1回目はシッターさんと、2回目は演出家である父の横で観ていたが、どちらも何とか集中して観ていたようだ。
しかし、2回目に私が冒頭の演説で一瞬ロレッた時、すかさず父の顔を見て「お母さん、やっちゃったね」という顔をしたらしい。あなどれない…。
それにしても、3年生になると、言うことが憎らしい。
まったく笑い声のなかった日曜日の公演の後、「今日は誰も笑ってなかったね。ひひっとも聞こえなかったよ。」と言うので、「あれ?お母さんが舞台で『しゃれじゃな』って言って笑った時、お客さんも笑ってなかった?」と聞くと、「お客さんは笑ってないよ。出てる人たちが後ろで笑ってただけだよ。」と言う。
確かに、お愛想笑いをする演技で、出演者は笑っていたが…。うう、あなどれない。
またうちの子供は、観劇の翌朝、まだよく目覚めていない父親に誉め言葉を言うのが習慣だが、私にも、目覚めて一番に「よかったよ。」と言ってくれた。
誉めるのが恥ずかしいのか、前の日に随分話してても、そんなことは言わないくせに。自分でそうするもの、と段取りを決めているのがおかしい。
観ていない日も、「今日はよくできた?」などと聞く。「ミスしないでね」とも言う。
一人前のご挨拶。
そのうち、舞台に立っていて、一番観てほしい人になるのだろうか。きっと、辛口コメンテイターになるんだろうな。それでも観てくれるだけいいけど。
シッターさんと新宿からの帰り道に、がんばっているお父さんとお母さんに何かプレゼントをあげると話し合って、それぞれが好きな色の髪飾りやペンケースを買ってくれた。嬉しかった。
また、公演が終わって、やっと暇な時間ができた夕方に、母子二人で手をつないで、近所に買い物に出かけた。「こんな時間がなかったからね~」とはしゃいでいる我が子がとても可愛くて、だから、そのためにもやはり仕事は重要だと思った。逆説的だけど。会ってない時間があったために、二人の時間がいとおしく感じる…、うーん、なんか恋人と一緒ですなあ。
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